かものはし日記
2001年1月号


1月3日

20世紀はやけに安定した世紀だった
先が見えやすい世紀
ソリッドな感じ
堅牢な建築物のような
21世紀
不安定だし
未来も見えない
だからこそ
水のような
自由な世紀
20世紀は走るか、歩くか、しかできなかったけれど
21世紀は泳げる
「水を怖がらない」
今年の目標

実家に帰る
父も母も弟も元気そうで何より
去年母親と外であったときは
ちょっと元気がなくて心配だったが
今日は元気そうでよかった
母親の顔を見ながら
俺はこの女が死んだら絶対泣くな、と思う
男はみんなマザコンなのさ、と思う
マザコンは男として正しい精神
日本人って自分がマザコンだと認めたがらない傾向にあるけれど
男はみんなマザコンなのさ

1月4日

「21世紀は宇宙の世紀」であると
NHKの特番でアーサー・C・クラーク先生は言っておりましたが
しかし
冷たくなった天ぷらを
かりっと暖められる電子レンジが存在しない程度の科学力で
何が宇宙世紀(笑)

1月9日

編集者に猫の絵本の原稿を渡す
いつも思うが
仕事が終わるとほっとするというより
なんか寂しい
そして
猫を描いていると
猫への思いは募るばかりで
さらに寂しい
(猫いない歴も、もう3年半)
ああー
へーベルハウスプラスにゃんに住みたい(笑)

1月10日

隣のマンションは依然工事中
今日は紫色のクレーンが入った
どんよりと曇った空の灰色と薄紫色のクレーンが
やけにマッチして
ほれぼれするくらい美しい

成人式で暴れたり
一連の少年犯罪の根底にあるのは
やっぱり寂しさだよね
少年は母親の愛情から
心の中の女性性を育むのだ
男の子はもっとマザコンでもいいと思う
というより
マザコンであることを認める
マザコンであることを恥じない
だって
しっかりマザコンしてないと愛情も優しさもわからない
愛情と優しさがわからないと自立もできない

1月11日

犯罪を犯す前に
ちょっと思いとどまって旅にでる
世界は広いのだから
どこかに自分の居場所が必ずある
愛される場所が必ずある

ちょっと腰痛
仕事で座りっぱなしで腰痛になるのは当然なんだけれど
キッチンが低すぎて
姿勢が中腰になってしまい
長時間料理をしていると腰にくる
もうちょっと高いといいんだけれど

妻のシックだけれどカラフルなスカートを
クリーニングに出しに行ったとき
店員さんに
これ、のれん?
と言われてしまったよ、と
妻に話したら
(ようするに君のスカートはのれんに似ているんだよ、と言うところで笑わせたかったのだが)
あんたの姿がどっから見ても板前さんだから
そういわれたのよ
と言われ
そりゃそうだと納得してしまった。

1月14日

寒波襲来
外出時
ついに靴下をはき
毛糸の帽子をかぶる
帽子をかぶらないと板前だが
帽子をかぶると過激派に見えるオレ

1月17日

だましだまし過ごしてきたが
ついに風邪でダウン
風邪はちゃんと引くのがいちばん健康にいいそうです
風邪菌は体の中の悪い菌も殺してくれるらしいし
抗体も作ってくれる
さらに風邪で寝込むのはストレス解消にいい
だって治るとすっきりするでしょ
風邪は
邪な風と書くわけだけれど
体の中にそういうものを取り込んでこそ
全体のバランスがとれるわけですね
邪悪さの中でも愛は育つし
愛の中にも邪悪さは潜む
人はそのあたりでうろうろするのがいちばん健全
と思いながら寝込む

1月18日

まだまだ風邪
夕食の準備のついでに
中古レコード屋にピンクフロイドのロジャー・ウオーターズの2000年のライブCDが
売っていたので買い込み
レンタル屋で
ビム・ベンダースのパリ・テキサスがもう一度見たくなって借り
さらにジェット・リー主演の
ヒップホップ・カンフーアクション映画ロミオ・マスト・ダイを借りる
ジェット・リーはいいね
笑顔がかわいい
アクションぴかいち、演技も上手
なかなかよい映画でした
ロジャーもいい具合に老けていて
ブルージィーな感じがすばらしい
(曲はほとんどピンク・フロイドの曲)
分裂してピンクフロイドの看板を下げているデイブ・ギルモアより
ずっといい

1月19日

絵本の打ち合わせ
色校が上がる
編集者のTさんにいわせると原画と色が全然違うらしいが
すでにどんな色で塗ったか覚えていない(笑)ので何ともいえん(笑)
見た感じ、多少気になるところはあるけれど
基調となる色が綺麗に出ているのでひと安心
(猫がしたうんこの絵があるんだけれど
うんこの黄色がやけに綺麗に出ていて満足だあ(笑)
あとの微調整は3匹猫持ちデザイナー、Mさんにお任せいたします
さらに
第3作目の絵本の打ち合わせもする
話の導入部をうまく切り抜ければなんとか形になりそう
次はしっぽの話
物語は始まりが肝心
たとえば小説本を買うとき
(特に作者を知らないときに)
最初の一行だけを読んで買うかどうかをきめたりしません?
僕はします

ところで、まだ風邪ひいてます
体温36.4度
普通の人は平熱なんだけれど
僕の場合は平熱が35.4度だからね
(低温症か?)

1月20日

雪だ!
しかし風邪
しかし肋間神経痛で動けず

最近の猟奇的な事件は
犯罪というよりは
本人
家族
学校
地域社会を巻き込んだ
複合的な「事故」だよね
ハードディスクの空き容量不足のコンフリクト
気持ちに余裕がない
愛は空き容量に宿るんだよね
でも
パソコンと違って
心の中の空き容量は自分で作り出せるはず
空き容量を作り出せるものは
自分にとって何かを考えてみる
僕は何だろう

1月21日

今日は後藤の誕生日
おめでとさん
めでたくないか(笑)
お互いいい歳になったよな

1月22日

風邪さらに悪化
咳がひどい
体温も37度を超えた(注 僕の平熱は35.4度)
さすがに自然治癒力に頼るのも限界がきたようなので
断腸の思いで(笑)
咳止めを飲む
しかし
咳をすると
体中の骨が振動して
普段意識していない自分の骨を実感できるのが
なかなかおもしろい
おもしろがってどうする(笑)
ふっふっ、まだ余裕があるな

今病床で
衝動買いした本
津島佑子著「笑いオオカミ」新潮社 を読んでいる
なかなかおもしろい
津島佑子さんて太宰治の娘さんなんですね

1月23日

ようやく病気エンターティメントも
クライマックスを終え
エピローグへと向かいつつあります
今回は薬を使わずきっちり風邪を引くというコンセプトだったので
(ちょっと使っちゃったけれど)
快方に向かうたびに憑き物がとれたように
ずいぶん体が軽くなりました
薬を使わずに風邪を治す
じっくり風邪にたちむかう
現代ではぜいたくな娯楽のひとつです(笑)

1月24日

久々に
とゆうか10年ぶりくらいに
SFマガジンの表紙を描きます
どきどき
まあ、どんな仕事でも
白い紙を前にすると
途方に暮れるのと
ドキドキするのと
わくわく感がごちゃまぜ

コアなジャズファンでたちの悪いプログレファンである私ではあるが
モーニング娘の「恋愛レボリューション21」を聞くと
なぜか涙ぐんでしまうのでした
いい曲だよなあ

1月25日

ちょっと風邪がぶり返す
用心しなくちゃ

人間は唯一物語がないと生きていけない動物らしい
世界は物語だらけだ
もちろん本屋さんにはいっぱいの物語
自分の人生も物語
量子物理だって物語
すべてが物語でできている
人間は
現在という瞬間だけを糧には生きていけない
過去と未来を引き込んでこそようやく人間が食べることのできる糧となる
絵を描くときも
やはり物語性を何となく考えて描いてしまう
奥行きがあり
何か物語を想像できるような絵
そんな絵を目指して描いてきた
でもね
本当にその方向性で間違っていないのかな
たまにあるんだよ
瞬間をとらえているとしか思えない絵とか音楽とか
瞬間しかない
物語なんて全く存在しないのに
なぜかふるえるほどの生命力が宿っている
以前そんなだれかの絵を見たような気がするんだけれど
だれだか思い出せない
過去と未来というものに引きずり込まれない気高い「現在」という瞬間
そういう瞬間を野生というんだろうけど
そんな絵を僕はいつか描けるんだろうか
と悩んだりする(笑)

1月26日

なーんて
そんなに真剣に考えることはなくって
贈り物だと思えばいい
誰かに贈り物をあげるように
絵を描く
贈り物だから
自分の一番大切なものを送る

野菜が高いね
まあ、これだけ寒いとハウス栽培の暖房費がかさむから
野菜も基本的には石油製品だものね
でも
最近の過激な安売り戦争(テレビでやっていた)
大根一本10円とか
サーロインステーキ一枚10円とか
全体の売り上げから見れば儲けがでるのだろうけど
農家の人が丹誠込めて作った食べ物を投げ売りするのは
見ていてちょっと悲しい
適正な値段で売って欲しい

1月27日

わーい雪だ雪だ
朝起きたら
カラー情報が破棄されたモノクロ世界
買い物途中に
妻と雪合戦をする

1月28日

誕生日メールありがとうございました
妻からは
お祝いに
プレステ2のガンダムゲームを貰いました(笑)
赤い彗星は手強い

1月29日

後藤の個展が今年のゴールデンウイークあたりに
開催される予定です
場所は北軽井沢(おしゃれ!)
なんと小説家の池澤夏樹さんのお義母さんが経営する喫茶店で
やるそうです
くわしくは追って掲示します
また絵を売るそうなので、よろしくね

久しぶりに仕事で後藤と合作をします
なんかどきどきしちゃうな




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