かものはし日記2001年10月号


10月3日

あまりに髪を短く切りすぎて
海兵隊みたいになってしまった
いや、特殊部隊か

キンモクセイの匂いがすごい
近所に大きなキンモクセイの木があるからだけれど
キンモクセイは
空気が綺麗じゃないと
咲かないそうな
今年は空気が綺麗なのかな?

「原体剣舞連」制作レポート
3分の1くらいはできたかな
何事もそうだけれど
自分で決めて
全力でやる
というのが基本
それがいちばん難しいのだけれど
そうすれば後悔しないものね
幸せへの道だね
でも、難しい

10月4日

世界というのは多様さが基本
というか
多様さが正しい
みんなで何かを一緒にやるなんて
小さいときから大嫌い(笑)
みんなで力を合わせてやることにろくなことはない
戦争とかね
大勢で力を合わせてしなければできないことは
やらなくていいことばかり
(ちょっと極論)
自分のやりたいことは自分で決めて責任をとる
世界はつながっているから
各々が独自の行動をとっても
世界はちゃんとまわっていくような気がするんだけどな

10月10日

大地とは
その土地にすむ人々にとって
隅々まで聖地である
たとえ
テロリストを撲滅するためだとしても
聖地が他者に空爆されるのを
その土地にすむ人々が黙って受け入れられるはずはない
アメリカ人は
インディアンからアメリカ大陸をぶんどったときに
彼らからそのことを学んだはずだ

俳優で
「バッファロー66」の監督をしたヴィンセント・ギャロは
音楽家でもあったのね
新作「when」を購入
レコード屋さんの試聴コーナーで何気なく聞いたら
とても良かったので
思わず買ってしまった
映画もナイーブな感じが素敵だったけれど
音楽もそんな感じでとてもいい
才能あるなあ
アヴァンギャルドでスピリチュアルなラブソング
秋の夜におすすめ

10月11日

ライナーを読んでいたら
ギャロはプログレファンだったのね
イエスとかキングクリムゾンが好きで
ジャズも好き
今年買ったCDの中ではいちばん気に入ってます
もう一度バッファロー66が観たくなってしまった

10月14日

茂本ヒデキチさんの展覧会へ
水墨画で人物画をかいている方
僕もいつか水墨画をやりたいのだ

ローリー・アンダーソンの7年ぶりの新譜
LIFE ON A STRING を購入
バックを
ジョーイ・バロンやビル・フリーゼルなど
ニューヨークのアバンギャルド系のミュージシャンが固めているのもいい
相変わらず優しいローリーの声
ギャロの新譜といい
最近「あたり」が多くてうれしい
2枚とも秋の夜長にはぴったり

10月15日

孤独と死
ローリー・アンダーソンの新譜のライナーを読んでいたら
今回のアルバムのテーマであると書いてあった
いつも優れた作品の根底には
肯定も否定もされない「孤独と死」が漂っている
自分の中の孤独を見つめ、死を受け入れられれば
人は優しくなれるし
おだやかになれる
そんな音楽

10月16日

数年前に出た本で
本屋でいつもちょろちょろ立ち読みをしていて
数年かかってようやく買う決心がついたので買いました(笑)
松岡正剛氏の対談集
「色っぽい人々」
辻村ジュサブロー、ワダ・エミ、石岡瑛子、安藤忠雄など
世界的に活躍されているクリエイター達
みんな欲が深い
何かを究めようとする欲望
触れられないものに触れようとする欲望
世間では
欲望といえば「お金」とかなんでしょうけど
お金ごときに目がくらむなんて
彼らにすれば欲がない方なんじゃないかな
みんな
もっともっと欲が深くなりましょうね(笑)

初めて
リゾットなるものを作る
お米をオリーブ油で炒めると
水晶のように透きとおるのが素敵

10月17日

寒いですねえ
今日は久々に
気功系接骨院へ
肩こり、腰痛、眼精疲労などなどがすっかり良くなって
スキップしながら帰宅

何故だかわからないし
とっても不思議なんだけれど
絵を描いているとき
あ、この絵昔描いたことがあるなあ、って
まったく根拠のない記憶がよみがえってきたときは
絵の出来がいいんです
とっても不思議
そういう既知感ってとっても大事

10月20日

炭疸菌・・
ウイルス・・
作家のウイリアム・バロウズが言いました
「言語は宇宙から来たウイルスだ」
有名なセリフです
確かに
言語は
人の脳に入り込んで
人の思考を支配しているのかもしれない
人は皆言葉を使って考えるから
そして
言葉が憎悪を生み出しているのかもしれない
と、ふと思うのです
なぜなら言葉は理由を求める
これこれこういう理由で
奴らは間違っている
理路整然とした言葉
言葉がたくさんの理由を食べて
満腹なとき
なにかそこにものすごい憎悪を感じてしまう
違う言葉を話せば
違う憎悪が発生し
永遠にかみ合わない
・・と言うのも理屈か(笑)

銀杏を頂いたので
ペンチで割って
フライパンで、から煎りして
食す
もちろん、ビールを飲みながら
おいしいねえ
秋の味覚だね
でも
熱いうちに皮をむかないと
綺麗に向けなくなってしまうので
指先がやけど気味

10月21日

朝日新聞のコラムの中で
ドラマ「最後の家族」に関する原作者の村上龍氏へのインタビューが載っていて
インタビュアーの
ラストが寂しすぎないか、と言う問いにたいする答えが印象的でした
寂しさくらい、あっていいんじゃないですか。
そう
寂しさくらいあってもいいのです
寂しいくらいがちょうどいい
寂しさを
肯定的に
素敵に
さわやかに
描くことが現代の物語の最大のテーマですね
優しさの彼方には
寂しさがあるとおもうのです

10月22日

お昼ご飯
余ったご飯で焼きおにぎりを作ってみる
余った何かを一工夫して
何かを作り上げ
それがうまくいったときが
いちばん楽しい
夕食は
昨日のキムチ鍋であまった春菊をゴマ和えしてみる

10月23日

牛肉離れのせいか
スーパーに野菜、サラダコーナーが新設
こーゆう対応だけは
日本人って、早いよな(笑)
和食のお総菜コーナーも充実
日本食って21世紀的だね
でも
食べ物は命を頂くわけだから
なんでも感謝して食べたい
牛肉も

10月24日

日本の政治家って
保守的な人は
悪い意味でほんとに日本的だし
革新的な人は
ただのアメリカかぶれ
ほんとに日本的で新しいものを提示できる人が
いないんだよね
「あいまいさ」の新しいビジョンが欲しい
早急に

10月25日

しかたがない
どうも数日前から
集中力が途切れがちだし
風邪気味で体調も良くない。
キング・クリムゾンの95,96年当時のライブアルバムが
新譜として出ていたのは知っていたのだが
今更そんなの聞きたくないやと(マニア的発言)
CD売場を素通りしていたのだが・・
しかたがない(笑)
買うか・・(最後の手段だ)
と思い、買ってしまった
長丁場の仕事(絵本の仕事のことね)は集中力が途切れがち
すぐ投げ出したくなるのだが
そこを思いとどまるのが忍耐力
何をするにも
一番大事なのは忍耐力
1に忍耐
2に忍耐
愛も忍耐(笑)
これだけあれば何でもできる!

忍耐力を維持するために大切なのが
リズム
自分にあったリズムに乗ること
自分の心臓のリズムに心地よく絡むリズム
ということで
僕にはクリムゾンの変拍子のリズムがいちばん体にしっくりくるんだね
ありがとうクリムゾン
ありがとうロバートフリップ(クリムゾンのリーダー)
ありがとう太陽と戦慄パート2(曲名)
これさえあれば
絵本の100冊や、200冊
いくらでも描けるさ(うそ)

10月26日

松岡正剛さんは
サッカーの中田の身体能力を
「高速で矛盾を連続処理していく身体」
と表現した
サッカーのようなスポーツは
いっぺんにいろいろなことをやらなければいけない
あっちから来たボールをあっちをむかずに
敵のディフェンスをかわしつつ
味方の動きを見極めて
むこうに蹴る
並の選手ならそれが体のよじれとして外部化されてしまうけれど
彼の場合は瞬時に体の内面で矛盾が処理されコントロールされる
だから
何気なくプレイをしているように見えてしまう
「高速で矛盾を連続処理」
という言葉に魅せられてしまった
絵を描くというのも
若干これに近い
むろん僕には高速処理なんてできないけれど(笑)

ずーっと思っていたけれど
アフガニスタンへの食料投下
空の上から食べ物を投げ与えるなんてなんか失礼な話だよね
そんな失礼なことはせずに
音もなく潜入して人殺しができる特殊部隊がいるのなら
難民の人たちのテントの前に
そっと食料を置いていくくらいの芸当はできるはず
サンタクロースみたいにさ

10月27日

幸せとは
適度な緊張感と心地よい疲労感の繰り返し

10月28日

今日はなぜか仕事の調子が良くて
機嫌がいいおれ(笑)

10月29日

友人と長電話
いいね、長電話は
些細な一言から話がどんどん変わって行くところが
スリリングでいい
ジャズだな(笑)
家族というのが
いい意味でも悪い意味でも
ナショナリズムの原点なんじゃないかという僕の問いに対して
彼は
いやファシズムだ!
と返ってきて、大笑い
なるほど家族にはそういう側面もあるな
こーゆうくだらない極論を楽しく話せる友人がいることに感謝の
午後でした
ネームの邪魔してごめんね

10月30日

絵本「原体剣舞連」の装丁をしてくれる友人のデザイナーが
絵本の途中経過を観に来てくれた。
前日
電話で打ち合わせをしたときに
僕は
僕の絵を素材にして
好きにデザインしてね
僕の絵の邪魔にならないようなデザインではなく
僕の絵に絡んでくるようにしてね
と言ったら
彼はジャズのセッションみたいな感じですね、と言ってくれた
くうう、しびれる奴だぜ(笑)
全体を見終わったあとで
後半絵が洗練されて来すぎて
息切れしている感じがあると指摘され
なるほどそうだよね、と反省する
洗練より生命力
バランスが難しいのだけれど
しめきりまであと一ヶ月
へろへろだけれど
なんとかラストスパート

10月31日

「関係ないね。」
よく聞く言葉だし
自分でもよく使う言葉
しかしこの世界に関係のないものなど何一つなく
すべてが繋がっている
そして何かと何かを関係づけられる感性こそが
一番大切な感覚であり能力である
と思う
繋がっているという「実感」
この「実感」がなくして
どうのこうの理屈や理念や理想を並び立てても
しかたがないんだよね
生まれてからいままで
「実感」なんてものがあったのだろうか
って
ふと考え込む
自分の体から出ている無数の糸のひとつぐらい
引っ張ってみる勇気が欲しい


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