かものはし日記2002年2月号


2月1日

がんばってねー
とは言うけれど
実は頑張るのは嫌い
身体学者、野口三千三いわく
頑張るというのは
眼を張って、外側に対してバリアーを張ること
では
どうすればいいのかというと
「したたか」
にする
下が確か
動くほうの筋肉は力を抜いて
それを支える筋肉を確かにする
力を抜いた方が自由度は増すし
本来の自分らしさがでやすい
頑張って生きないで
したたかに生きたいよね

2月2日

とりあえず
本棚2つ分にまで本を減らす
この辺が限界かな
これ以上減らすと
僕のひ弱なアイデンティティが崩壊するかもしれない(笑)
結局800冊くらいの本を処分しました

2月3日

冷たい雨
雪に変わりそうで変わらない

子供の頃から
人と競争をするのは好きではないのです
同じ土俵で戦うのがいや、というか
同じ価値観の中でじたばたするのが嫌いなのですね
人はすべて違うのですから
全員違うことをすればいい
そうすることで
初めて本当の秩序というものが立ち上がるような気がするのです
同じ価値観を共有すればするほど
世の中は乱れていくような気がします

2月4日

絵本「原体剣舞連」の値段が決まりました
本体価格2600円
税込みで2730円と
ちょっと高めです
申し訳ない
発売は今月の下旬です

ジュード・ロウ主演
「クロコダイルの涙」を何気なく見る
ブレードランナーと絵本「100万回死んだ猫」を
足して2で割ったような映画
というのはわかりづらいかな(笑)
愛してくれる女性の生き血を飲まないと生きていけない主人公
そして殺してしまった女性達の感情が彼の体内で結晶化する、という設定が僕の好み
最近、男優はジュード・ロウがいちばんのお気に入り
ナイーブでクールで優しくそして何を考えているかわからない笑顔がいい

2月5日

最近は
早朝
エクセルシオール・カフェとか
ファーストキッチンとかに出かけていって
コーヒーを飲みながら
レタスサンドなどを食べるのが日課
(エクセルシオールという名前が素敵
だってスタートレックに出てくる宇宙戦艦の名前じゃあないか)
朝のカフェは出勤前のサラリーマンや学生などで
結構込んでいる
誰かに的を絞って観察し
その人の背景を想像するのが好き
連れがいたりすると会話からいろいろな想像ができる
じっとその人を見ていたら
目があったりして
ちょっとどきり。
ひとりひとりに膨大な人生があると思うと
カフェにいるだけでくらくらする
みんな何かを探している目をしている
きょろきょろしている
もちろん僕も
生き甲斐などという無粋なものを探さず
生きているだけですばらしい、っていう目をしている人は
今日もいなかった
ま、いても気がつかないんだろうけど(笑)

2月6日

海の上のピアニストを観る
有限だからこそ
人は無限になれる
ピアノは88鍵しかないから
音楽は無限になれる
有限の中に無限が内包されている

2月7日

今日は
大量の雑誌を処分しました
なんでこんな雑誌を取っておいたのだろうとか
月日とともに自分の中の価値観というのは
変わっていくのですね
いい傾向です(笑)

2月8日

プロ野球のキャンプ情報が盛り上がっている(気がする)今日この頃
今頃はどこのチームも優勝しそうで
夢が広がる楽しい時期
野球を観ながら
それを人生になぞるのは
おじさん的行為ではあるが
野球には
熱力学の第二法則と同じくらい
自然界を支配する重要な法則を内包している(と思う)
タオイズムに通じていると言ってもいい(かもしれない)
とても大切な法則がある
それは3割の法則
イチローだって4割は打てない
2割8分を打てば来期の契約はほぼ安心
3割打てば上出来だ
ようするに
人の行いは常に3割でいいということ
妻の言い分は3割聞けばいい(笑)
もちろん
僕の言い分も3割通ればよしとする
人に親切にするのも3割
それ以上はお節介
嫌がらせをするのも3割
それ以上やると殴られる
仕事に生活や感情を持ち込むな、とはよく言うが
3割くらいなら
なんかおもしろい
絵も3枚に1枚くらいうまくいけばたいしたもんだ
宇宙を支配する3割の法則
野球は奥が深い(笑)

2月9日

次の絵本の企画をまとめるために
習作を描きました
いろいろ頭によぎるのですが
まとまりませんな(笑)
そんな中で2点習作をアップしました
見てね
女の子の野生をテーマに描きたいような気がしています
感想なんかを聞かせていただけるとありがたいです

夜は
若い友人の未来を祝い食事会
優しく強い新郎と聡明な新婦
とても素敵なカップルでした
二人を見ていると
反省すべきところが多いおれ(笑)

2月10日

大量にCDを売りさばき
引っ越しに向けてだいぶ身軽になりました

友人 修生氏の新刊漫画本
ブラッククロウ(リイド社)を購入
僕の大好きな潜水艦ものです
センスのいい本です、是非!

古代メキシコ・シャーマンの知恵が
シャーマンの師匠と弟子(著者)の
十数年間の修行を通して
対話形式で書かれている
カルロス・カスタネダの最後の本(1998年死去)
「無限の本質」(シリーズ11冊目)二見書房
が出てました
(もちろん買いました)
カウンター・カルチャー世代に絶大な影響を与えた本でもあります
インディアンやシャーマニズムの好きな僕としては
とても影響を受けました
ああ、ぼくもヤキ・インディアンのシャーマン ドンファンの
弟子になりたい、ってね(笑)

2月11日

今日は1日、カスタネダの遺作「無限の本質」を読む
あまりにおもしろかったので
泣きながら(感動しながら)1日で読んでしまった。
普通カスタネダの著作は
訳のわからないヤキ・インディアンのシャーマニズムの世界観の説明が
えんえんと対話形式でなされているので
読むのにものすごく時間がかかるのだけれど
今回は
著者自身の子供時代,青年時代の回想を中心に話が進んでいるので
まるで良質のアメリカ文学(ポール・オースターのようだったよ)を読んでいるように
すらすら読めました
おもしろいのは
本当ならただの絵空事のような
シャーマニズムの世界観の説明が妙にリアルで
本当のように思えるのに
実際経験したはずのカスタネダ自身の回想の方が
なんか嘘くさい
というふうに感じてしまうところです
カスタネダ自身の経歴は謎に包まれています
ほんとうに
ドン・ファンというシャーマンは存在したのか
彼のすべての著作はフィクションではないのか
すべてが謎のまま
彼は亡くなってしまいましたが
(それとも無限の活動的な側(僕らが言うところの死後の世界)に生きながら移行したのか)
彼の書いたこの本達が
とても素敵なものであることだけは確かです

2月12,13,14日

ここ数日は
カスタネダのことで頭がいっぱい、いっぱい
島田裕巳の「カルロス・カスタネダ」(ちくま文芸文庫 新刊)という本も読んでみたりする
カスタネダが肝臓ガンで亡くなったというのも
解せないな

バレンタインデーということで
妻が「旦那さんにもどうぞ」といって仕事仲間からもらってきた
ドラヤキをかじる

2月15日

習作のページに1点追加しました
見てね

クローン猫作製の成功のニュースにはちょっとショック
死んだペットをよみがえらせる技術として
注目されているらしい
技術だけではなく
絵画も音楽も詩も小説も
死というものを
意識せず
不死にベクトルを合わせるものはすべて
インチキで邪悪だ
世界は無常ではかないから美しいのに

2月16日

朝、どかっと絵本「原体剣舞連」が届く
なかなかきれいに仕上がりました
(見本を見る瞬間というのはものすごく緊張します)
手に取っていただけると幸いです
(来週末あたりには書店に並ぶと思います)
いっぱい売れると次の企画も通りやすいし(笑)

またまた2つほど誤植を発見
ひとつは僕のあとがきだし
よく考えればわかるのですが
もうひとつは
詩の読み方なのでちょっと重要
「赤ひたたれを地にひるがえし」の部分
ローマ字表記で
akai tatare wo chi ni hirugaeshi
となっているところが
正しくは
aka hitatare wo chi ni hirugaeshi
です
「ひたたれ」とは聞き慣れない言葉ですが
漢字では「直垂」とかきます
武家の代表的な衣服らしいのですが
僕の絵本ではそういうところは勝手に変えてデザインしてありますので
よろしくお願いいたします(笑)

ふと思い出したのですが
最近、僕の一押し映画のひとつ「クロコダイルの涙」で
ジュード・ロウ扮する主人公の名前は
全部子音で構成されていて母音がないのです
不思議な人物設定だなあとおもっていたら
とある本によると
インドでは
母音を発音することによって宇宙と身体が瞑想によってつながると
考えられているらしいのです
つまり
作者もしくは監督は
子音だけで構成されている名前を持つ主人公という設定に
宇宙とか世界ととか他人とかと全くつながりを持たない「孤独」を
込めたのでしょうね
(深読みかな)

2月17日

トラン・アン・ユン監督の映画
「夏至」をビデオで観る
母の秘密
妻の秘密
夫の秘密
秘密のお話
秘密などなくオープンマインドで生きられたら
それはそれですばらしいけれど
人にはそれぞれ秘密があるから
魅力的ということもある
でも
一度秘密を持ったら
死んでももらさないくらいの覚悟は欲しい

2月18日

訳あって熱海へ行く
(温泉じゃあないよ)
東海道線で大磯をすぎたあたりから海が見える
風がなくビニールシートを貼り付けたような穏やかな海
横浜で買った駅弁を食べたりして
ちょっと旅気分
熱海はもう桜が咲いていた
ちょっとぼたっとした桜
ソメイヨシノとは違う種類らしい
俗称「熱海桜」というのだそうだ

2月18日その2

デビット・リンチを語らせればほぼ世界一という
(もちろんそれだけではないのだけれど)
美術評論家の滝本誠さんは
僕が若いころからいろいろ影響を受けた方々のひとりです
(特にツイン・ピークスの頃とか
プログレッシブ・ロックの評論もされていました)
そして
驚いたことに
その滝本さんは
偶然にも妻の友人だったのです
で、無謀にも
彼女に頼んで「原体剣舞連」の絵本を滝本さんに渡して
見てもらいました
そして
なんかピンクフロイドの「原子心母」のようなイメージだねと言う
夢のようなとてもうれしい感想をいただきました
ありがとうございます
(妻は最初イエスの「原爆母艦」って言うアルバム知っている?とか聞くので
そんな変なタイトルのアルバムはないと言うと
なんかジャケットに牛が描いてあるやつ、というので
やっとわかりました(笑))

2月19日

とりあえず
マルホランド・ドライブの特別鑑賞券を
近所のスーパーで買う(笑)
よしよし
これでひとまず安心
いつもは映画なんてビデオで観りゃいいや、という不届き者なのだが
デビット・リンチの新作はビデオになるまで待てない
映画館に行くのは数年ぶりだぜ

「原子心母」と言えば
元ピンクフロイドのリーダー
もしくはピンクフロイドそのものだったロジャーウオーターズが
3月に来日するそうですね
(大の日本人嫌いらしい)
「原子心母」のアルバムのB面全部(CDではなくレコードの頃の話)を占めていた
タイトル曲、原子心母
原題ATOM HEART MOTHERは
プリミティブな歌声とオーケストレーションを融合させた
当時としては画期的な音楽でした
何かシャーマンの儀式のような。
あと大好きだったのは
「おせっかい」というアルバムに入っていたエコーズという曲
東南アジアの雨期のような
ゆったりとした時の流れとしっとりとした空気
日本の梅雨時にも合います
これもB面全部を占めていて10分以上の長い曲です
そして超有名なアルバム「狂気」にはいっている
虚空のスキャット
原題GREAT GIG IN THE SKY
酸性雨が降るロサンゼルス
タイレルコーポレーションのビルの屋上で
レプリカントが命がけで絶叫するような。
ロジャーはものすごくいやなやつだと思うけれど
彼の音楽はとても素敵だ(笑)
そして感謝してます
中学生の頃、レコードがすり切れてつるつるになるくらい聞きました

2月20日

マルホランド・ドライブを観に
久々に有楽町の映画館へ
シネ・ラ・セットというおしゃれな名前になっていたが
昔は並木座って言う名前だったはず
10年以上前、ここで「ベルリン天使の唄」を観たような記憶があります

マルホランド・ドライブは
期待しすぎて
今ひとつだったのだけれど
あと2回くらいは観たい映画
何度か観ないと味がでてこないと言うか
これは映画にするより
ツイン・ピークスのようなテレビドラマの方が絶対おもしろいって
思いました
そして
彼独特の
現実と非現実という構造は
もう古くさいような気もしました
やっぱりベストはブルーベルベット
いや、ストレートストーリーかな

2月21日

今日から妻は海外出張
楽しく仕事をしてくるがいい(笑)
夫はといえば
服を脱ぎ散らかしても
消しゴムのかすをまき散らしても
文句の言われない静かな生活がしばらく続くのだね
うふ

話の通じない人と
世間話をするのは結構つらい
立っている場所がずいぶん違うと
なかなか接点が見つからずに
でも、なんとか話をつなげようとして
ついついよけいなことを言ってしまって
あとで落ち込んでしまうから

2月22日

今日はいろいろ雑用で忙しかった
引っ越しの電話移転の申し込みなど
とても覚えにくい番号で
こんなの覚えられないよ(笑)
ここ10年ほぼ2年おきに引っ越しをしているので
頭の中はごちゃごちゃだ
でも住所は覚えやすい
でも気を取り直して
引っ越しのお知らせはがきを作る
イラストは「仙骨の龍」を使いました

本屋さんではまだ見かけないけれど
ネットの本屋さんではちらちら見かけるようになった原体剣舞連
本屋さんに並ぶのは来週あたりでしょうか
どぞよろしく

2月23日

高田明美さんの展覧会に行きました
帰宅したら
留守番電話に女性の声で中国語のメッセージが・・
だれ?

2月24日

某雑誌の編集者で
ずーっと僕の担当をしてくださった女性が
会社を辞めて
何をしているかと思っていたら
劇団ひまわりで役者をやっておりました

今日その公演があるというので
代官山のシアター代官山にのぞきに行ったら
びっくり
ほぼ主役
脚本はジェームズ三木
最初は観ている方がどきどきしていたけれど
堂々と役をこなし
最後は一人スポットライトの中で歌っておりました
控えめでおとなしい女性でしたが
情熱的な内なるエネルギーがあったのね
演劇という場所が彼女にシンクロしたのでしょう
演劇というのは
人のエネルギーが生で放射されるので
ものすごい説得力があるよね
びっくりだあ

2月25日

友人と7時間ほど長電話(笑)
妻が出張中じゃなきゃ、絶対できないな(笑)
(だって、夕ご飯作らなくてはいけないもん)
長電話もなかなか素敵なもので
話しているうちに、いろいろな発想が浮かぶのです
今日は
手というのは人類最初のインターネットだね、という話
手というものは
物を作ったりするためだけにあるのではなく
誰かに触れて
手と手が触れて
気持ちの交感をするためにあるんだよね
いつも誰かをさわりたい
(って、痴漢はまずい)

2月26日

午前中左脳をフル回転して計算
午後いちで確定申告をすませる
税務署からの帰り道
かとうさん、かとうさんと呼ぶ声が聞こえたのだが
どうせ僕じゃないと思って振り返らなかったら
なんで気がつかないのよ、と怒鳴りながら
通りを横切っておねえさんがやってきた
あれま
後藤のうちの大家さんの娘さん
相変わらずおきれいでなにより
これからオイルマッサージ?
さすが

そうそう
税務署からの帰り道、俳優の長塚京三さんとすれ違う
テレビで観ると神経質そうだけれど
実際は100倍くらい神経質そう(笑)
ものすごい考え込んでいる顔をしておりました
でもかっこよかった

2月27日

原体剣舞連の絵本の習作と没原稿(部分)を載せているページを作りました(笑)
10点ほど・・
全体ではいまいちなのだけれど
このあたりは気に入っているんだよなあっていう感じの絵ですね
モモ

2月28日

<オンラインブックストア>bk1さんのホームページで
原体剣舞連の特集を組んでくださいました
ありがとうございます
リンクを張りましたので
是非観てみてくださいね
ここで取り寄せてくれたりするともっとありがたいです



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