かものはし日記 2002年10月号


10月1日

台風上陸
ものすごい風
マンションのベランダからうきうきして
ごおんごおんと鳴る風の音を楽しんでいたら
突風が吹いて
吹き飛ばされそうになる
あぶないあぶない(笑)

画材屋さんに行ったら
水彩紙のサンプルが置いてあって
なんか良さそうなのでごっそり持って帰ってきて
ちょっと試し描きをしてみる
なかなか良さそう
色の発色とパステルののりがいいのだ
紙を変えてみようかな

10月2日

台風が夏を運んできてしまいました
今日の東京は最高気温29度

江刺から絵が帰ってきました
ぼくの絵たち、ごくろうさん

10月3日

カキフライを食す
秋ですね

季節がいいので、つい散歩をしてしまう
落ち葉を拾ってみたりする
日本人は落ち葉の色がいちばん好きだと思う

ニュース番組
「うちの娘が自殺なんかするはずはない」

涙ながらに訴える母
なぜそんなことが言えるのだ
どうしてそんなことがわかるのだ
彼女は被害者なのだが
なぜかその傲慢さに腹が立つ

10月4日

変わりたいと願う
でも実際は、もうすでに変わっていて
その変化に気が付かず
今まで通りのやり方でやっているからうまくいかない
やり方を変えてみる。
願わなくても
どんどん変わっていく
ということで
絵を失敗しました(笑)

10月7日

新生ジーコジャパン
前線に
中田、俊介、小野、稲本というスター選手をずらりと並べて
大丈夫なんだろうか
よくサッカーは上からうまい順にチームを組んでもうまくいかないと
言われているけどね
なんかものすごくバカっぽいような気がするが
でも観てみたい(笑)
そうか
観てみたいっていうのが大事かも
バランス無視の個性第一主義というのは
今の日本に必要なのかもね

10月8日

システムというのは
なんであれ
真実を語りはじめるとこわれてしまうものなのだ
システムを維持するためには
本当のことを言わない
そして
新しいシステム(もしくは新しいステージ)に移行するためには
本当のことを言わなくてはいけない

不幸が起きない不幸というのもあるよね
何某かの不幸が
何かの絆を再確認したり、深めあったりする
そして何かに気が付いたりして
人生をより奥深いものにする
緩慢な幸せは何も生まない

10月9日

誰かと気持ちが通じるということは
とても大切なことだし
奇跡的なことでもあります
そして、それは
自分の中の弱さがとても心地がいいと感じることです
へなちょこ万歳!(笑)

10月10日

都会は
空気があまりきれいではないけれど
それでも
秋の風は、とても気持ちがいい
少しばかり冷ややかなのがいいね

人が言葉というものを使い始めてから
何千年か経ったのだが
いまだに
言葉を上手に使えないのではないか、と思う
言葉という荒々しい野生の生き物は
頭に(脳)に集中しやすく
そのなかで
たくさんの妄想を生み出し
そして、妄想は暴走し
邪悪な存在へと変化していく
本当の言葉の使い方というのは
多分
言葉を身体全体で使うことだと思う
頭だけでは
支えきれないほど言葉の力は強いのだ
体全体に言葉を巡らせてみて
それを感じてみる
身体全体で言葉を使う
というのは
とても抽象的でわかりづらいとは思うんだけど
でもそういうことなのさ
(ごり押し(笑))

10月11日

ようやく自分の好きな音楽と
自分の描く絵のイメージが合ってきたような気がします
いままでは
ちょっと浮世離れしたシンフォニックロック系のイメージに
絵が近かったのだけれど
やはりジャズ
ジャズは人間そのものを音楽にしてきました
僕もそういう絵を描きたい
やっぱり人が一番好きだもん
だめな部分も
弱い部分も
情けない部分も
崇高な部分も

10月12日

ロード・トゥ・パーディション
観に行きたいなあ
監督はアメリカン・ビューティ(ここ数年観た映画の中ではいちばん好き)
のサム・メンデスだし
大好きなジュード・ロウも殺し屋で出ているし
(スターリングラード、クロコダイルの涙)
僕的にはベストな映画のような気がするのだ
ただひとつの気がかりなのは
俺はトム・ハンクスが苦手(笑)

10月13日

キングクリムゾンの新譜を買う
来年発売のアルバム「THE POWER TO BELIEVE」の布石となる
ミニアルバム
「HAPPY WITH WHAT YOU HAVE TO BE HAPPY WITH」
確かにブルースっぽい曲もあるのだが
あんまりぱっとしないなあ
なんかだんだんバカっぽくなってきたような
輸入盤のCDを見つけたときはうれしくて
スキップして帰ったのだけど
ちょっとがっかり。
こんな出来では
仕事のBGMに使えやしない

アジア大会の決勝は残念だったけれど
彼らの世代は
ゴール前でほとんどもたつかない
ワンタッチでシュートという場面が多くて
観ていてスピーディで気持ちが良かった
若いというのは素敵だね
踏み込みの勇気が違う
あわよくば、今後技術が向上してくるに連れて
勇気がなくならないように気を付けて欲しい
それは何でも同じ
絵も
技術が上がると
大抵それに連れてつまらなくなるんだよね

10月14日

最近は毎日ぐっすり眠れて
朝は6時頃に目が覚める
(最近は体調だけはものすごくいいのだ
多分今まで生きていた中で一番いいかも
それは
今年から始めた整体法とストレッチが
ようやく体になじむようになって
自分自身の体を自分でメンテナンスできるようになったから)
ちょうど机の前に立てかけてある描きかけの絵は
オレンジが基調で
朝日に光ってとても美しく見える
美しく見えるのは朝だけなのが難点だけどね(笑)
何とか昼間の光にも耐えられるようにしなければ

10月15日

優れた作品は
その作品に触れた人にとって
鏡のようなものなのでしょうね
作品に触れることによって自分自身を映してしまうような
だから
描き手は
鏡を磨くように
自分の顔が映ってくるまで
筆を走らせなければ、ね

毎日散歩で横切る公園
あごひげを蓄えたちょっと強面の少年が
ラジカセのテープを回しながら
ひとりで
一生懸命ダンスの練習をしている
僕が目の前を通ると
はずかしいのか
ダンスをやめてしまうのだけれど
恥ずかしがり屋ではいかんじゃないか
パフォーマーは!
ひとりでひっそりと黙々と練習するところを観ると
血液型はO型だな(笑)

10月16日

日本ジャマイカ戦
スタープレーヤーをずらりと並べ
小野と俊介を同時に見られる楽しみもあったけれど
今ひとつぱっとしなかったような
でも
俊介はいい顔になってきた
りりしくなったよね
ものすごく辛い状況をよく克服しました

10月17日

たまに定食屋さんで、ご飯を食べたりするのだけれど
ちょっと量が多いんだよね
基本的に小食なので
家に帰ってくると
お腹がいっぱいで、寝込んでしまう(笑)

ちょっと用事があったので
後藤のうちに遊びに行く
ひさびさに後藤とビールを飲みながら
夕食(お寿司を買っていく)
ちゃんとご飯を食べていないだろ
ちょっとやせているので心配だ

10月18日

冬に備えて長袖のTシャツを数枚買う
基本的にセーターが苦手
冬は長Tにコートを羽織るのみ
どうせ今年も暖冬なので、それでオッケー
昔に比べると
東京の冬は、ちっとも寒くない
本当に地球の温暖化が実感できるけど
これが我慢できなくなる頃(とくに夏)には
もう手遅れ
でも人は手遅れにならないと動きださないんだよね

10月19日

久々にDANIEL LANOIS の
FOR THE BEAUTY OF WYNONAを聞く
ちょうど彼がブライアン・イーノとU2のヨシュア・ツゥリーの
プロデュースをした頃(90年代初頭)なので
音もそれっぽい
(ジャンル的にはアメリカのプログレっていう感じ(笑))
どこかネイティブ・アメリカンぽい感じがするのも好き
ジャケットは写真家のヤン・サウダックのちょっと退廃感のただよう写真
全裸の女の子がナイフを持っている
なかなかショッキングでかっこいい
彼女のあばら骨の美しさに惹かれて
買ってしまったCD

10月20日

ハンガリーのフゼシュジャルマトから
展覧会の写真が届きました
オープニングセレモニーのようですね
写真の右側に僕の名前があって
その下に日本の国旗があるのが
なんか恥ずかしい(笑)
テレビ局も入っていて
ビデオを送ってくれるそうです
うまくデータに出来たら
ホームページに載せようと思っております


なんかもう始まっているようですが
打ち合わせと違うなあ
確か29日からのはずじゃ・・
まあいいか(笑)
子供たちがたくさんいるようで
ちょっと困ってしまった
だって
けっこうエッチな絵を送ってしまったんだもん
彼らの服装からすると向こうはもう寒そうですね

APPLE社のCM
ウインドウズは使えないので乗り換えてマックにしましたと
素人らしき女の子がカメラの前で主張する
そろそろ末期かな
ベータマックスの最後に似ている
ベータは
VHSより性能がよかった
マックもウインドウズより使いやすいし美しいデザインだと思う
その昔
蒸気機関が内燃機関より実は効率がよかったのに
なぜか内燃機関が主流になってしまった
不思議だね

10月21日

個人は手遅れになる前に
たいてい何某かの手を打つね
身軽だから、フットワークも軽い
手遅れにならないと動けないのは
組織だよね
これからは
大きくて身動きがとれない封建的なシステムじゃなくて
(企業や銀行の統合なんて本当に時代錯誤のような気がする)
能動的で小さなシステムがたくさんできて
それが、有機的に連なっていく
生物のように。
社会全体が本当の意味で生き物になっていかないと
生物学がこれからの経済モデルになっていけばいいのかも

敬愛していた作家の日野啓三さんが
亡くなっていたのです
17日
とても影響を受けた作家のひとりです
小説より彼独特のエッセイが好きでした
かものはし日記の書き方というのは
多分彼のエッセイにとても似ていると思います
(もちろん彼の方が比べものにならないくらい素敵ですが)
リビング・ゼロというエッセイ集
僕の父親より年上なのに
ブライアン・イーノが大好きで
U2のヨシュア・ツゥリーが大好きな作家

10月22日

ショートソックスを6足買う
生地がくるぶしまで達しない靴下
暑がりの僕にはちょうどいい

何にでもリズムがあるように
人の体にもリズムがある
高潮期と低潮期
5週間から7週間の周期でこれを繰り返すらしい
高潮期は積極的に活動し
低潮期は静かに休む
どうやら今は低潮期らしく
仕事がはかどらないのだよ
そんなことも言ってられないのだけれど
でも生理的なリズムなんだから
逆らっても、しょがないんだよね
9月は絶好調だったのにな

10月23日

そういえば昨日は
ぎんなんを食したのでした
フライパンでから煎りし
固い殻をペンチで割り
薄皮を手で剥いて粗塩を付けて、ビールと一緒に食す
苦みが素敵
大人の味だね
ただ、熱いうちに皮を剥かないと
冷めてしまうと皮が向きにくくなってしまうので
素早く処理する為に
優雅には食べていられない
そのうち熱い皮を剥いている指先が軽い火傷になって
ひりひりしてきて
剥くのをあきらめる
そのあたりがやめ時
ぎんなんのようなエネルギーの強い食品は
いっぱい食べちゃいけないんだよね

10月25日

つらいことや悲しいことや
ひどいことも沢山あるけれど
夢も希望もないのかもしれないけれど
やっぱりこの世界は素敵だし
生き物もかわいいし
(とくにカピバラ(笑))
人も大好きだ
(とくに女性(笑))
そうじゃなかったら
絵なんて描けないもん
自分の仕事は世界を肯定し続けること
がんばるよ

10月26日

午前中は
散髪屋さんに行き
例によって坊主刈りにしてもらう
(俺は坊主刈りが一番似合うな)
外にでると頭が寒い
そのままスターバックスで
3時間ほど読書
その間コーヒーを2杯飲んだら
胃が痛くなる

ビデオが壊れているのだが
今更新しいビデオデッキを買うのも
なんだかなあ、と思い
小さめのDVDプレーヤーを買う
(トースターみたいなプレーヤー)
指輪物語を観る
長すぎて、何度も止めて休んだりして
途中からはスターウオーズと区別が付かなくなり
(テーマも絵柄も一緒(笑))
我慢して3時間も観ていたのに
話は途中で終わり
むやみにスローと空撮を使うところが何となく気に入らない
でも
小さくて弱いものが世界を変える、というセリフは
とても素敵だ

10月27日

ハンガリーから
僕の個展の新聞記事が送られてきました
10月15日開催でした(おいおい)
ハンガリー語なので、自分の名前とJAPAN以外はさっぱりわからんが
要点だけを日本語に翻訳してくださったところによると
好評みたいでよかったです
ルーマニアとスロバキアの芸術関係の人から
来年4月に展覧会をしてみるつもりはないかというオファーを頂きました
うーむ
描いた本人より絵の方が旅行好きだね(笑)
(本人は旅行嫌い)
でも今度こそ行かないとまずいかな
誰か一緒に行ってくれないかな
ひとりで行くのはさびしいじゃん

昨日の日本シリーズは巨人の快勝のようだが
9回表のカブレラのホームランは恐ろしい
あんなインコース高めの球を振って
どん詰まりなのにホームラン?
ドームだから風は吹いていないのに
怪力!
松井は、ホームランバッターとしては繊細すぎるような
性格的に大リーグで通用するのか
ちょっと心配

10月28日

松井を観ていると
「責任感」という言葉が浮かんでくる
4番という責任感
もちろん野球は彼にとっては仕事なのだから
責任感は大事なのだが
もうちょっと幸せ感が欲しい
チャンスに順番が回ってきてしまう幸せ感
責任感を感じる前に幸せ感を感じて欲しい
新庄みたいにさ(笑)

NHK教育でレッドフォードの「ナチュラル」を観る
何度観てもすばらしいファンタジー野球映画
今は怖い感じだけれど
このころのグレン・クローズは
優しい感じでとても素敵

10月29日

アマゾンから
日野啓三氏の遺作「落葉・神の小さな庭で」が来る
ぺらぺらとめくる
「私たち人間は変奏する風のうなりから生まれたのだ・・」という
文章にしびれちゃったりして
そういえば彼は
ブレードランナーが大好きでした
ラスト
レプリカントのロイ・バティが
雨の中で機能が停止するシーン
「おまえら人間には信じられぬものを俺は見てきた
オリオン座の近くで燃えた宇宙船や
タンホイザー・ゲートのオーロラ
そういう思い出もやがて消える
時が来れば
涙のように
雨のように」
持っていた鳩が空へと飛んでいく
鳩は図像学では魂の象徴らしい
確か
このセリフがリビング・ゼロというエッセイ集に抜き書きしてあったはず

10月30日

ちょっと実家に帰る
鎌倉の山奥の僕の実家
夜の静寂が心地いい

あっという間に日本シリーズが終わる
巨人はタレント集団だし
それをうまく使った原監督は見事なのだけれど
やはり西武が弱すぎる
というより
パリーグのレベルが落ちている
フリーエージェント施行後の
パリーグの優秀な選手(とくに投手)のセリーグもしくは大リーグへの流失が
主な原因。
要所要所で
制球が甘いピッチャー
粘りのないずさんなバッティングのバッター

10月31日

辻堂の海の近くのおでん屋で
母親とおでんを食べる
今年、父が他界したので
母親孝行を実行中(笑)



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