かものはし日記2月号


2月1日

あたらしい仕事場のかぎをもらいに大家さんのところへ
大家さんはお豆腐屋さん
お豆腐と湯葉をいただく
ここのお豆腐屋さんは本にも載っているような
有名なお豆腐屋さんらしい

後藤がビールを持って遊びにくる
引越のダンボールの上で宴会

2月2日

携帯電話をついに買ってしまう
あんまりほしくはなかったのだけれど
最近は外で電話をしようにも公衆電話はめったにないし
いまさら「俺は携帯なんて嫌いだ」って
あんまり意地を張ってもしょうがないしね(笑)

2月3日

台東区へいよいよ引越
大家さんに挨拶に行ったら、またまたお豆腐をいただいて恐縮する

2月4日

部屋の整理
荷物が少ないので意外と早く終わる

担当の美人編集者さんが転職をするというので
ちょっと 宴
都電荒川線の発着がみえる居酒屋でバーボンを飲む
ああ、憧れの下町生活がはじまるのね
うっとり

2月5日

今日は浅草近辺まで散歩
怪しいお店がいっぱいあって楽しい
ぼくは東京生まれなのだが
実は
浅草に行くのは初めてなのだ
「寅さん」を上映している映画館を見かける
多分1年中「寅さん」なんだろうな

散歩の途中吉原に迷い込む
昼間から客引きのお兄さんたちが・・
歩いていると5メートルおきに
お兄さんいい子がいるよ、写真を見てって、2万円ぽっきり
と話し掛けられて、断るのが大変
(2万円もあったらジャズのCDが最低8枚は買えるじゃん(笑))

2月6日

近所に「角萬」という有名なお蕎麦屋さんがある
(引っ越す前にネットでおいしい蕎麦屋がないか検索していたのさ)
引っ越した当日からほぼ毎日通っているのだ
いつもものすごく込んでいて大盛況
うどんのように太い無骨な手打ちそば
どろどろの蕎麦湯がやかんでくる
しびれるね
わさびも練りわさび
青山あたりのこじゃれた蕎麦屋は
こじゃれた皿に蕎麦がちょっとしかはいってなくて
さらに
わさびを自分でおろし金でおろさなくてはいけなかったりして
むかつくね
実は
蕎麦には高級な本物のわさびより
練りわさびの方が合うのさ
店員がものすごく無愛想なのもいい
ジャズだよ、ジャズ(笑)
ぼくは基本的におそばはもりそばしか食べないのだが
ここのお店は肉南蛮そばが「売り」らしい
ほとんどのお客さんがみんなそれを注文する
肉南蛮そばは邪道ではないのか?
そう思いながらひとりもりそばを食べるおれ

2月7日

折りたたみの自転車を買う
ここは自転車置き場がないし
エレベータが小さい
玄関の端っこにも置けて邪魔にならない小ぶりなやつを所望
浅草に近い千束商店街の自転車屋さんで
いろいろな折りたたみ自転車を見せてもらう
どの折りたたみ自転車も機能的にものすごく工夫がしてある
自転車と言うのは本当に美しい機械だとおもう
人類が生み出した機械の中で一番美しいといっても過言ではない
と言う話を
自転車の折りたたみ方法の解説を聞きながら
自転車屋さんに話したら
かれは、ほんとうにそのとおりと言って
値段を少し安くしてくれた
何でも言ってみるもんだね(笑)
ほんとはプジョーの折りたたみ自転車がほしかったのだけれど
ちょっと大きすぎてエレベータには入りそうもないので
あきらめてちいさい国産車を買いました

2月8日

自転車が手に入ると行動範囲はぐっと広がり
隅田川のフィリップ・スタルクデザインの麒麟ビールのビルあたりまで
出向いてみる
帰りは山谷あたりに迷い込み
路上におじさんたちがいっぱい落ちているのを目撃する
普通、彼らはダンボールとかで囲ってそれなりに自分の荷物というものを持って生活していると思うのだけれど
ここのおじさんたちは何も持たず道路に無造作に寝ているのだ
市街戦のあとのような光景
危うく自転車で轢きそうになったりして

2月9日

最近晴れて「友人」になった女性がぼくの引越先を見学にきたので
近所のお好み焼き屋へ
ここはマスターがお好み焼きを焼いてくれるので楽でいい
自分で焼くよりプロが焼いた方がおいしいに決まっているし

今まで住んできた
世田谷区、大田区、目黒区、渋谷区に比べて台東区はどこがいいのかというと
ひとつは
坂がない
どこまでいっても平坦な道
自転車でぷらぷら散策するのにとても楽チン
もうひとつは
若者がほとんどいない
居酒屋で飲んでいてもうるさい若者がいない
若者が路上でつるんで騒いでいない

2月10日

今日は、しなびた町台東区(笑)にはめずらしいくらい立派な中央図書館を
中心に散策
(台東区って金ないんだよね、きっと)
図書館の目の前に
フリージャズ系のライブハウス「なってるハウス」を発見
一度は行ってみたかったライブハウスが近所にあるというのはとてもうれしい
さらに
かっぱ橋道具街へ
業務用のガスコンロや流し台、食器、喫茶店や定食屋、蕎麦屋にあるような
机や椅子が所狭しと、さらに暖簾や看板まで売っている
業務用の家具を部屋に置いたりするのもいいかもね

夕方はものすごくしなびた喫茶店で打ち合わせ

おいしい日本酒が安く飲める小料理屋を
近所に発見
最近晴れて「友人」になった女性と飲みに行く
マスターの面構えがいい
ジャズだね、ジャズ(笑)
泡盛と黒糖焼酎をいただく
黒糖焼酎は焼酎が喉を通ったあとほんのりと黒糖の香りがする
毎日飲んでるな、最近

2月11日

昨日休みだった台東区の中央図書館にもう一度行く
まだネットが使えないので
(どうなっているんだ!YahooBB)
ここ数日は
メールのチェックを漫画喫茶でしていたのだけれど
ここの図書館では2時間100円でインターネットが使えるのでとても便利そう
めずらしくマックも使える
漫画喫茶でも図書館でも
ホットメール以外のメールのチェックはしてはいけないのだけれど
勝手にメールソフトを無料サイトからダウンロードしてインストールして
アカウントを入力してメールを読み込み
チェックが終わったらソフトをアンインストールして
痕跡を残さず去っていく悪い俺(笑)

2月12日

村上春樹の
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドを読み終える
一番小説らしい小説であった
ちゃんと物語があった(笑)
彼の他の小説は、いい意味で小説ではないような気がする
フリージャズの曲のような感じ
彼の作品を10冊読むということは
誰かのフリージャズの演奏を10曲聞くというのに近い
ようするに全部一緒
(全部同じに聞こえる)
ただ、ひとつひとつの作品の中の緊張感の種類が違う
フリージャズは音楽じゃない
緊張感というものを具体化したもの
村上春樹の小説もそんな感じ

久々に寒い日
散歩をしているとちらちらと雪が
雪が降っても昼は角萬でもりそば
(ここのおそばがすっかり気に入ってしまった)
一日のうちで一番大切な時間(笑)

2月13日

渋谷のパルコブックセンターへ
洋書の写真集を2冊購入
一冊は女性の立ちポーズ(ヌード)ばかりの写真集
人がただ立っているだけというのが、実は一番好きなポーズ
空と大地をつなげるような立ち姿の女性たちが素敵
あたしは大地と空をつなげる役目があるのよっていう感じがいい
もう一冊は娼婦の写真集
サイボーグのようなモデルのヌードも美しいけれど
生々しい娼婦のヌードも美しいのです

2月14日

わざわざ手紙に「義理」と書いてある義理チョコをもらう(笑)
まあそういうことはチョコを見れば判るのだよ
俺はもう大人なんだから(笑)
お中元に「社交辞令」とは書かないでしょ
ま、しかし
義理チョコというのは無償の愛だね(笑)
見返りを期待しない愛なんだから
本命チョコは見返りを期待する愛だもの
愛のレベルから言えば
義理チョコの方が上だね

ECMから出ているデイブ・リーブマンのドラム・オードという
アルバムを聞く
エレクトリック・マイルスっぽいリズミカルな演奏
彼のこんなアルバムが出ているなんて知らなかった
なかなか素敵
ECMから出ている音楽は
どんなに騒がしい音楽でも
そのベクトルは静寂へと向かっている
音楽は静寂へと向かうべきというのが
ECMの基本姿勢だからね

村上春樹の処女作「風の歌を聴け」を読む
こりゃひどい作品だ

2月15日

最近ぼくは耳フェチなんじゃないかと思うのだ
満員電車の中で
そばに耳のきれいな女の子がいると
かぷっと噛みたくなる衝動に駆られる(笑)
もちろんそんなことをしたら社会的に抹殺されるので
しないけれど

2月16日

日曜日は毎日行っているお蕎麦屋さんが休みなので
とても悲しい気持ちになってしまう
もうほとんど麻薬中毒者のように
ここのお蕎麦を食べていないとだめな体に(笑)。
太さと歯ごたえが絶妙
引越好きのぼくではあるが
究極の蕎麦屋さんを見つけてしまった今
当分この町からは離れられないだろうな

2月17日

ドン・チェリーの「永遠のリズム」が最近のお気に入り曲
絵がうまくいかないときに良く聴きます(笑)
自分の中にリズムがあるということは
自分の中にかっこいいドラムとかっこいいベースラインがあるということ
ロックとかジャズは
ドラムとベースがかっこよければ
他の楽器が何をしてもかっこいいんだから。
自分の中にリズムがあれば、何をしても大丈夫

戦場のピアニストを見に行きたいなあと思ってます
監督がロマン・ポランスキーというのがちょっと不安だけど
(大好きなイザベル・アジャーニとイカのお化けが
セックスしている映画とか作るしさ)
主人公の顔がいい
CMでおすぎがあれだけ傑作だと絶叫しているんだから
いい映画なのかもしれない
ちょっと期待

2月18日

やれやれ
ようやくyahooBBがつながって
社会復帰
12メガはなかなか快適
BBフォンについては
インターネット電話なので音声の遅延があるのではないかと
心配していたのだけれど、まったく問題なく動作をするので一安心
まあひとつ難をいえば
モデムがものすごくかっこ悪いことかな

先週あたりから再び始まった「剣客商売」
(第3シーズンっていうかんじかな)
キャスティングが変わってしまってちょっと残念
今、台東区の中央図書館では
「池波正太郎」展をやっていて
覗いてみたら
彼は小説ばかりではなく
絵も描くのですね
それもずいぶんうまい
彼の描いた剣客商売の主人公の秋山先生の設定イラストなんて
藤田まことそっくり
ひとつの芸を極めた人は
他に何をやらせてもうまいよね
逆に
ひとつのことを極めれば
たいていのことは何でもできるようになるみたいです

2月19日

毎日通っている蕎麦屋での出来事
4,5人のおばさんたちが「あらあら人がいっぱい。」とか言いながら、
どやどや入ってきた
ここの蕎麦屋は
基本的にお客さんはサラリーマンが主体で
一人で入ってきて、さっと食って出て行くという
ほとんど座席のある立ち食い蕎麦屋みたいなもの
おばさんたちがお蕎麦を食べながら会話を楽しむようにはできていないのだ
案の定、他の客が黙々と食べている中
おばさんたちはきゃっきゃ言いながら蕎麦をつついていると
横にいた下町の親父が
「あんたたち、蕎麦好きじゃないね」
と吠えた
気持ちのいい日であった(笑)
何事もそうだが
空気を読め!

ジャズオルガン奏者ジミースミスの名盤「the cat」
を引っ張り出して聴く
1964年の作品
ベースラインはひたひたと歩く猫のように
ドラムスはリズミカルにうねる猫の姿態のように
オルガンは猫の逆立つ毛のように

2月20日

基本的には
蕎麦屋を中心にぼくの世界は回っている(笑)
もりそばの大盛り(普通盛りじゃちょっと物足りない)を食べるために
朝食と夕食の量を減らす
蕎麦屋が空いている時間帯を狙っていくので
その時間を中心に一日のスケジュールを立てる
それから・・

村上春樹の「1973年のピンボール」を読み終える
これもくそだ
でも前作よりクオリィティは高い
最近「友人」に成り下がった女性の話によると
風の歌に聞けとピンボールと羊をめぐる冒険は3部作で
前2作がつまらないからといって
羊を読まないと損をするよというので
羊を読み始める
(羊はおもしろいらしい)
彼は着実に作家として進歩をしている
こういうひどい作品があるから今がある
作家であれ
音楽家であれ
友人であれ
自分自身であれ
一人の人間が着実に変化していく姿を見るのが一番楽しい
ただ
角萬の蕎麦の味だけは永遠に変わらなくてよろしい(笑)
(友人に日記が蕎麦のことばかりと言われるが
今は蕎麦しか楽しみがないのだ)

最近お気にのメデスキ・マーティン&ウッド
(ジミー・スミスを今っぽくした感じ)の
去年でた最新作
インヴィジブル
これがいちばんかっこいい
彼らも変化を続けているね

羊を読んでいたら
村上春樹も耳フェチのようですね
今日
19世紀末の画家クノップフの画集をつらつら見ていたら
彼は、あごフェチだね
あごがやたら強調されている
そういえば数日前ぎゅうぎゅうの満員電車の中で
ぼくの後ろにいた女の子が
ぼくの肩にあごを乗っけて
あごを休めておりました
おい!

2月21日

時間について
一生懸命時間を埋めようとする人
一生懸命時間を掘り起こそうとする人
時間は埋めるより掘ったほうがいい
埋めるより掘る方が大変だけれど
何が埋まっているか判らないから
掘った方がいいよね

2月22日

もしや体質が変わって
花粉症が治っているかもと毎年期待をしているのだけれど
やはり今年も来てしまった
部屋の中には強力な空気清浄機があるので
部屋の中では大丈夫なんだが
散歩するのがつらいね
ただね
くしゃみをするのは、好きですね
あれは気持ちがいい
人のいないところで思いっきりくしゃみをする
(体をまっすぐにしてしないと、筋肉をいためるので注意が必要)

2月23日

最近「友人」に成り下がった女性がまたまたやってくる
ひとしきり話しまくり
またまたお好み焼きを食べにいき
さらに薄着をしてきたから寒いといって
ぼくの一番いいセーターを着て帰っていく(笑)
最近「友人」に成り下がった女性とは誰なのか
そのうち発表しますが
恋人とか
彼女とか
ファム・ファタルとか(笑)
そういういいものではまったくありません
もっと生々しい生物です

お風呂でビールを飲みながら読書
手首より上を湯船につけられないのが難点だが
なかなか快適

2月24日

今日はとても寒いね
どんなに寒くても、お昼はもりそば
でも結局蕎麦湯を飲むから体は温まるのです

アニメ「千年女優」をDVDで観る
原節子へのオマージュ?
元P-MODELのリーダー平沢進の音楽がなかなか素敵
絵描きで革命家の青年を追うヒロイン
絵描きで革命家という設定はあこがれるな
作家とか絵描きは革命家になる勇気がないから
文章書いたり絵を描いたりしてお茶を濁す

村上春樹の「羊たちの冒険」を読み終える
初期3部作はぼくの肌には合わなかった
満員電車の中でおじさんとぴったりからだがくっついているような気分(笑)

2月25日

毎日「角萬」の蕎麦を食べる
毎日同じ物を食べ続けると言うことは
毎日普遍性を食べると言うことと同じことである
そして
たぶん病気だ(笑)
デビットリンチもお昼ご飯は毎日同じらしい
彼の場合は
マクドナルドのハンバーガーらしいけれど

2月26日

意味のないことの素敵さ
についてよく考える
小説の中の登場人物のように
僕らは存在する意味なんてないし
目的もない
指輪を探し回って苦労する必要もない(笑)
世界を救う必要もない
人生の終局でストーリーのつじつまを合わせる必要もない
ただ生きてそして死んでいく
音楽が楽器から発生して
空気の中に消えていくように

2月27日

「SUPER 8」というDVDを観る
no smoking orchestraというユーゴのジャズバンド
ジャズとジプシー音楽とパンクとロックと・・いろいろ混じっている音楽
映画監督のemir kusturica(アリゾナドリーム)のリーダーバンド
メンバー一人一人を紹介しながら
彼らの音楽を紹介していくドキュメンタリー映画
おすすめ
音楽家と楽器
音楽家は自分の声に一番近い楽器を選ぶのではないかと
推測するのだが
いかがでしょうか
みんな選んでいる楽器が違うのだから
意見の食い違いは日常茶飯事
メンバー同士がけんかしたりしながらツアーは続く
みんなちょっといかれているし(笑)
ベーシストが演奏途中で肩を脱臼したり
めちゃめちゃ
人は
愛し合ったり憎しみあったりしないと一緒にいられない
愛も憎悪も接着剤
そして音楽も。
騒がしい音楽だけどなぜか物悲しい

2月28日

花粉症について
1.春にも匂いがあるということをもう忘れている
2.テレビで、杉が花粉を放出しているシーンを流さないでほしい
あれを観ただけで、症状が悪化する
マスメディアは本当にサディステッィクだ
3.花粉症になった人は、選ばれた人類であるという宗教が存在するのならば
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