かものはし日記
2005年12月号


12月1日

世界で最初に音速を超えた犬

「自分の中にいる本当の(素敵な)他人」

テレ東の番組「オーラの泉」を毎週拝見していて思うことは
どうやら
「才能」というのは、ある種の憑依現象のようなものなのですね
出演されているゲストの方に役者さんが多いからそう思うのかもしれませんが
役を演じると言うことが、ある意味憑依であると解釈すれば
憑依されやすい人は才能があるというふうに言うことが出来るかもしれません
確かに
音楽家でも絵描きでも作家でも
なにかが降りてこないと
演奏できない
絵が描けない
ストーリーが進まない
と言う方はたくさんいます
僕もたまーにそういうことがありますが
そういうときは
あまりにあっさりできあがるので
まるで自分で描いた気がせず
何の充実感もありません(笑)
(他人の作品を観て、このひとすごいな〜、っていう感覚はありますが(笑)

一枚の絵を描き上げると言うことは
自分だけがしていることではなく
もちろん現実の世界の人たちのサポートなくしては出来ないことだし
もしかすると
霊的な支援を受けてできあがる
ものすごくユニバーサルでグローバルなコラボレーションなのかもしれません
なんて思うと
一人で黙々と絵を描いていても
寂しくなかったりします(笑)

12月2日

leylineというのがあります
聖地(ストーンサークル)と呼ばれてるところを地図上で結ぶと
直線(光の線)になる、らしいです

songlineというのもあります
道には無数の歌が込められていて
その歌をイメージしながら進めば必ず目的地にたどり着くという
オーストラリアのアボリジニの世界観
ブルース・チャトウィン著「ソングライン」で
有名です
アボリジニにとっては
すべてが聖地です
(こっちの考え方の方が好き)

leylineという名前のバンドを見つけました
音的には最近のキングクリムゾンっぽい音

leyline/project one(2001)

これはデビュー作らしくて
もう4枚ほど出ているようです
なかなかいい感じではあります

12月3日

昇天

高校生くらいのときから
ずーっと使ってきて
受験勉強のパートナー
(共通一次のマークシートはこれで塗りました)
絵描きになってからは
仕事のパートナー
(これで下描き)
三菱の0.3ミリのシャープペンシルが今朝昇天しました
20数年間、数十万回のクリックで
軸の金属がちぎれました
壊れた瞬間は
一瞬悲しかったけれど
今は感謝でいっぱい

ありがとう

これは家宝にします

ロスタイムで同点にされ優勝を逃したセレッソ大阪
セレッソが同点で、優勝が転がり込んできたガンバ大阪
ガンバの宮本さんは泣いていました
いい男が泣く姿はなかなか絵になるね
彼は頭も良いし
いつか
日本のベッケンバウアーになるんでしょうね
そうなって欲しいな

遠方より友人来る
半年ぶりぐらいにちゃんとお酒を飲みました
(ちゃんと、っていうのは変かな 泡盛をロックで3杯)
楽しい時間をありがとう
ゆっくり出来なくて申し訳なかったです

12月4日

観劇
毎年観させて頂いている友人の演劇も今年で5回目
(去年は展覧会で観損ねましたが、今年は何とか観ることができました)

名作 「12人の怒れる男」の女性版+1(男がひとり)

多分友人は主演かな
(このドラマは誰が主人公というわけではないからね)
昔から美人でしたが
さらに
ステージ映えするオーラを兼ね備えたようです
切れのよい演技が印象的でした
普段は結構ほわわんとしてるんだけど(失礼)

12月7日

月曜日に寄せ鍋をしてから
なぜかすっかり気に入って
3日連続鍋
昨日、今日は一人鍋(笑)
多分今週は毎日鍋でしょう
鍋は野菜をたくさん食べられるしね
(冷蔵庫が片づく)
つみれをいろいろ工夫できるし
だし汁の味付けもいろいろできるし
けっこう楽しい

足し算よりは引き算が難しい
いろいろなモノを絵に足していくより
いろいろなモノを絵から引いていく
引くことによって、空白が生まれ
そこにリズムが生まれる
詰まっているところにはリズムは生まれないのは
当たり前の話
リズムを生みだすために
引き算をする
当たり前なんだけど
最近ようやく気付いたような気がしました

リズムこそが生命力

12月8日

暖かくて自転車散歩日和
ふらふらと秋葉原へ
ほんと、ふらふらと行ってしまう(笑)
何を買うわけでもなく
ジャンク屋の中にいると落ち着くのです
最新テクノロジーに興味はないのです
一昔前あたりが好き
(今回は年末の音楽ファイルの整理のためにDVD−Rを大量購入)

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Mari Boine
ノルウェー北部に居住するサーメ人の血をひくシンガー
ジャズサックス奏者のヤン・ガルバレイクと共演してます
シャーマニックなドラミング
美しい歌声
ときには
ホーミーのような声も
(モンゴルからノルウェーは近いかな?)
とても生々しくて
とてもスピリチュアル

とてもお勧め

彼女を僕はビル・ラズウェルつながりで知ったのです
ビルはピーター・ガブリエルと同じくらいかそれ以上に
ワールドミュージックの普及に貢献した人
ちょっと強面で地味(アンダーグラウンド)なので目立たないんだけど
彼の名前を追っていけば
たくさんの良質な音楽に出会うことができます
ちなみに
彼女のアルバムはリアルワールド名義(ガブリエルのレーベル)でも出てます
ガブちゃんもさすが

12月9日

午前中難問が3つほど立ち上がり
途方に暮れていたのですが
午後には、解決策が見つかり一安心
というか
解決策をひねりだす瞬間が、とても快感でした
幸せってこういうことかしら(笑)

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meredith monk/ Do You Be

かつて手放したアルバムが
また僕の手元に帰ってきました
彼女は歌手というよりは、ボイス・パフォーマー
鳥のさえずりのような声
現代音楽風ですが
決して退屈ではありません
癒し系かもしれませんが
過激な癒し系です

20数年間使っていたシャーペンが先日壊れて
新しいのにしてから数日経ちますが
違和感があったのは5分くらいで
すぐに慣れてしまいました
思っているほど
繊細ではないのね
俺って(笑)

ー帰ってきたマーフィーの法則ー

うちのマンションの1階はお豆腐屋さんで
大家さんでもあるのです
たまに
別のスーパーなどで、お豆腐を買うと
決まって
エレベーターのエントランス付近で
大家さんに出くわします
その時は、何気なくそしてとっさに
レジ袋を隠すのです

12月10日

Damn Small LinuxというOSをためしてみました
LiveCDですから
ハードディスクにインストールせずに
CDドライブから起動させることができます
(フラッシュメモリにも入ってしまう)
わずか50M足らずの小さいOSですが
普通に使うのなら
たいていのことはできます
もちろんネットもメールも音楽も聴けてしまう
20世紀の古いマシンでも
軽々動くし
ほんとはこのくらいで十分なのです
古いマシンとLinuxがあれば
まだパソコンが普及していない地域にもネットワークを広げることが可能なのです

能動的で小さいシステムが好き
let the power fall

12月11日

てぷ将軍(仮名)と四谷へ
おしゃれな住宅街の中にある石響というライブ・スペースで
テレビなどで活躍されている北原久仁香さんプロデュースの朗読パフォーマンス
テーマは女の情念
嫉妬に狂い鬼神と化した女の情念
美しい声を堪能しました
美しいだけではなくすごみもあります

多分
男の嫉妬や憎悪も女性にそれほど負けてないと思います
ただ
男の嫉妬は絵にならないんでしょうね(笑)

情念の炎の余韻と共に
四谷の公園の銀杏の落ち葉を踏みながら帰りました
そして
ちらほらと雪も降ってきて
良い夜でした

12月12日

トム・ウエイツを聞きながら
絵を描く画家が多い
と聞いて
トム・ウエイツを聞きながら絵を描いています(笑)

酔いどれだみ声で都会人の哀愁を唄います
いわゆるビートニク派
(ギンズバーグやケルアックの詩など)
弱者へ対する優しさが好きです
バックは
マーク・リボーなどの先鋭的なミュージシャンで固め
アヴァンギャルドでノイジーにジャズしているのが好み

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rain dog

俳優として
ダウン・バイ・ローに出てたりしてます
監督のジャームッシュとも仲がよさそう

12月13日

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すっかりトム・ウエイツにはまっています
確かに絵を描きながら聞くのにいいようです

どの作品もアンチコマーシャルなサウンドなので
誰にでも勧めることはできませんが
どれもすばらしい作品ばかり
酔いどれ詩人と呼ばれていますが
情に流され、酒に溺れていると見せかけているだけで
決して情には流されない
(ダメ男と見せかけてダメじゃない)
だから、きっちりとすぐれた作品をたくさん残せるのですね
情に流されないのは
彼が優しいから
優しさとは、意外と冷静なものなのかもしれない
と、思うのでした

自分のダメさを冷静に
そして優しく見つめる
昔、ある大御所の漫画家の方に言われたことを思い出しました

かとちゃん!
(彼はなぜか僕のことをかとちゃん、と呼ぶのです)
漫画を描くって
ダメな自分との戦いだよね

そういう意味で
トム・ウエイツは、絵描きに合うのかもしれません(笑)

12月14日

日本の音楽は、曲より歌詞が大事なようです
日本人の根底には音楽がないのではないか、と
昔、安部公房のエッセイに書いてありました
そして
ジミヘンは唄わなかったらもっといいのに、と
密かに思っています
さらに
トム・ウエイツは唄わなければ意味がないし
歌詞も重要なのです
(日本語対訳付きの日本語版CDを買わなくてはいけません)

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mule variations/tom waits

いかれたパーカッションがものすごく魅力的なbone machineというアルバムがいちばん好きなのですが
(メタルパーカッションというよりはがらくたを叩いているような感じ)
ジャケットが気持ち悪いので載せません
ジャケットは、これがいちばん素敵

トム・ウエイツ関係の本はネットで調べると絶版が多いようなので
図書館に探しに行って
何冊か入手しました

信号を無視して
広い車道を横切っている車椅子のおばあさんを見かける
電動車椅子ではない
腕を力強く華麗に回して
車道を平然と横切っていく
ふと
おばあさんと目が合い
ニヤリとする

12月15日

本当の天使に翼はない

今日は母親と久しぶりに会食

母が言うには
女には、2種類の女しかいないのだそうだ
気の強い女とものすごく気の強い女
男にも2種類しかいないそうで
気の弱い男とものすごく気の弱い男

けだし至言だねえ(笑)

12月18日

トヨタ杯決勝
ケビン・スペイシーそっくりの監督が率いるリバプールが負けてしまってちょっと残念でしたが
コミュニケーション不足な代表チームと違って
クラブチームは日々の試合で培ったコンビネーション生み出す美しいパス回しを
じっくりと堪能できる
中盤でのパス回しはまるで美しい音楽を聴いているような気持ちよさ
派手なプレイより
実は基本的なプレイが丁寧で想像力豊かであることに
驚かされます
(見習わなくちゃ)

ほんとうの地球一決定戦
しかし
レアル・マドリードを銀河系軍団と言ったり
どうして
サッカーばかりが宇宙規模なの?
世界一じゃいけないの?
まるで地球一を決めた後に
銀河一決定戦がありそうな感じ(笑)

スタートレックのような未来でも
やっぱりサッカーは人々を熱狂させるスポーツであり続けるかもしれない
クリンゴン星人は強いでしょうね、きっと

12月19日

ひろき真冬さんの展覧会&ミニライブ(弾き語り)
に行ってきました
ひろきさんの絵
ひろきさんの歌
そしてひろきさんを慕って集まった人たち
彼らの表情もまたひろきさんの作品なのですね
素敵な時間でした

人との出会いというのは
不思議なものです
それは奇跡でもあるし
必然でもある
決して
ありきたりのことではなく
偶然でもない
断たれた関係性は
ひろきさんにより必然的に(偶然ではなく)つながり
今日
僕は会うべき人に会ったのでした
10年前に背負い込んだ荷物を
お互い下ろせたのです
優しい時間でした
とても感謝しています

12月20日

昨日の展覧会の後、今朝まで宴会(笑)
3次会のカラオケ店では、同じビルの2階で火事があり
非常ベルが鳴り響くなか、酔っているせいか足をふらふらさせながら
避難をするという貴重な体験もしました
(ちょっとしたぼやだったみたい)
そのまま帰っちゃったので、お金を払わず歌い逃げということになるのかな

しかし
みんな元気
朝の4時に焼き肉食ったんだぜ

12月23日

パンクという思想

数日経ってもふと思い出すのですが
ひろき真冬さんの展覧会でのパーティの
あいさつはとても素敵でした
過激に解釈すると
ようするにこういうこと

「僕はここワシントンD.C.で育ったから、官僚主義がどれほど根深いものかはよく知っている。
何かをしたいのなら、頼むんじゃなくて、やるしかない。
いつだって答えはノーなのだから」

というのは
オルタナティブ・パンクロックバンドFugaziのイアン・マッケイの言葉

ま、でも
頼むのも大事


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red medicine/Fugazi

12月24日

クリスマス・イブです

常に
注意深く、そして正直でありたい
と思っています
注意深さと正直さは、矛盾しますが
なるべく両立させたい
なるべくね

12月25日

できることが個性ではなく
できないことが個性なのだと思います
なにができないか
それを見極め
それを伸ばす(暴論)
できないから工夫して
なんとか切り抜ける
それが楽しい
練習して、できるようになっちゃったら、つまらないじゃないか(笑)

12月27日

「私は自分が思っている以上に嫉妬深いの 」

と、とある女性がいいました
なかなかいい台詞だな、と感心

誰もが、自分が思っている以上に嫉妬深いものです
情報化社会の進化のおかげで
われわれは、地球の裏側の人たちまで、嫉妬し憎悪しなければならなくなりました

嫉妬は、人間のもっとも卑しい感情である、とかなんとか
もっともらしいことを言っている人がいますが
僕はそうは思いません

嫉妬や憎悪がなくちゃつまんない

と思うのです
大切なのは、自分の中の嫉妬や憎悪という暴れ馬をうまく手綱を使って、手なずけること
嫉妬と憎悪の対象は増すばかりです
手なずけるには、ますます高度の技術と精神力が要求されます
どんな手綱で手なずけるかは、人それぞれだと思いますが
僕にとっては絵を描くことなのかもしれません

そして最終的には
誰にも知られたくなかった自分のことを絵にする勇気を獲得すること
それが目標

12月28日

エロ・スパムメールを送信しているものたちには
年末年始はないのだろうか
もう仕事納めですよ
くにに帰って、親孝行でもしないと
ほんとにバチがあたるからね

12月29日

散髪も行った
年賀状も書いた
あとは
換気扇などキッチン周りの掃除だが
これが憂鬱
来年に持ち越しかな〜

どんな色でも
合わない色はない
問題は面積比
合わない色同士も面積比をいじれば必ず合うのです
人間関係と同じ
合わない人はいないはず
距離感をいじればなんとかなるはず
 

12月30日

よっしゃ
キッチン周りの掃除終了
綺麗なコンロでわかすコーヒーはおいしい
心地よい疲労感
掃除って、あんまり好きではないけれど
はじめると
精神衛生上とてもよろしい
努力しただけきっちり成果が現れる
(絵を描くのとは違うのさ)

掃除とは精神安定剤なり

冬はどうして体調が良いんだろ
と考えたら
冷たいモノをあまり飲まないので
体を冷やさないからなのかも
と思いました
体を冷やさない
ということは、とても大事なようです

12月31日

ほぼ1年かけて
仕事の合間合間で描き続けてきた
宮沢賢治の詩「春と修羅」をテーマにした絵本が完成しました(ついさっき)
今年はあまり出かけずに
人に会わずに
絵本の完成のために自宅でひとり悶々としておりましたが
それでも
たくさんの人に支えられてなんとか完成したように思います
誰かのちょっとした一言が
ヒントになったり
瞬間瞬間の経験や感覚が
作品の路線を大きく変えることになったり
迷い、葛藤しながらの幸せな一年間でした

一人で描いているのだけど
一人で描いているわけではない

そういうことをちゃんと感謝できる絵描きになりたい
そう思っております
今年もありがとうございました