かものはし日記
11月号



11月3日

アナクロは依然小康状態で
強心剤を打たれると一時的に
元気になります。
ひなたぼっこをさせると
気持ちよさそうに地面に体をこすりつけてごろごろしてます。
太陽というのは偉大ですね。
目を細めてリラックスした顔をしてくれると
ほっとしますけど
呼吸は速くて苦しそうです。

11月4日

もうかれこれ3週間近く
ゼイゼイいいながら頑張っているアナクロを見ていると
泣きそうですけれど
反面、たいしたやつだなあ、と感心してしまいます。
あんな小さいからだで頑張られると
生きている間は全力でいきるのよ!
あきらめないわよ
あたしの生き様を見てなさい1
という目をしています。(ぎらぎらしている)
なんだかこっちが励まされているような気がします。

アナクロの病状はけっこう波があって
ほんとに悪いときには
猫用のトイレの中で寝ています。
最初なぜこんなところで眠るのかよく分からなかったのですが
体を横にしたまま用を足しているところを見て
そうか、別の場所で寝ていて粗相をしないように
最初からトイレで寝るように自分で判断したのかと思って
泣いちゃいました。

10月7日

アナクロは、今日はちょっと呼吸が楽そう。
少し元気です。
みなさんからの励ましのメールありがとうございます。
アナクロは幸せですね。
日本語読めるといいんだけれど・・

そろそろ来年2月25日に発売される
CDロム画集の宣伝コーナーを作ろうと思っています。
発売元のバンダイさんから何点かの新作画像を
ホームページで公開してもいいということなので
ご期待ください。

11月9日

最近はアナクロのために
ネギトロ買ったり
かんぱち、中トロ、サーモンのお刺身買ったりして
食べさせてあげるんだけれど
ほとんど食べられない状況なので
残りは人間の夕食
毎日豪華だ!
たまに外猫にあげると
あまりのごちそうに外猫達は一瞬躊躇する。
「こ、これは!」という感じ。

11月10日

多摩川の土手に座っていると
鳩が数羽よってきた。
その中の一羽がほとんど手が届く範囲まで寄ってきて
足を折り曲げて座りこんだ。
こっちをちらちらと気にしているようで気にしていないそぶり。
動物がそばにちょこんと座ってくれると
なんだかとってもうれしい。
手を伸ばせば触れそうな、でも絶対手は伸ばさない距離感もなかなか素敵だ。
鳩も間近で観ると表情がとっても豊かだ。

人間の中にある暴力性について考えてみる。
たとえば人間の全ての行為は暴力であると仮定する。
コミットすること
関係性を持つこと
これらは皆暴力だ。と考える。
殴ったり、殺人とかは当然暴力なんだけれど
誰かに話しかける。
好きな人に「愛しているよ。」という。
誰かに優しくしてあげる。
これらも皆暴力。
あらゆることが暴力なんだと思えば
なんとなくすっきりする。
あらゆることが暴力なんだと自覚する感性。
暴力の中に身を置き続ける強さ。
お互いがそれを自覚して暴力を振るい合う。
そこからなにかを見つける。

きのうK−1を観ていて(格闘技ファンじゃないけど)
優勝した兄ちゃんの目が
なんだか繊細ですごく優しそうなので
ふっとそんなことを思いました。

11月12日

ほぼ12年前
かわいい子星からやってきたアナクロは
今日AM7:55 かわいい子星に帰っていきました。
きのう獣医さんともう治療をしても治らないならば
注射をするのは痛がってかわいそうなのでやめてくださいと
話し合った矢先でした。
もっと早くあきらめてあげれば
アナクロは一ヶ月近くも苦しまずにすんだのかもしれません。
ちょっとかわいそうなことをしてしまいました。

数年前
ツイン・ピークスというテレビドラマがはやって
主人公のFBI捜査官クーパーが
死に瀕した連続殺人犯を抱き抱えて
「INTO THE LIGHT」
というせりふを言うシーンがあります。
一番好きなシーンです。
光の中へ・・

アナクロに励ましのお便りを送ってくれたみなさん
かものはし日記を読んでくれたみなさん
どうもありがとうございました。
とっても感謝しております。

11月13日

アナクロは
お骨にして多摩川に流してあげようと思っています。
参考までに
お骨にしてもらう料金は28000円
明日、小さくなったアナクロをとりに行ってきます。
しばらくは仕事場においておきたい。

聞いたことがない詩人と(どうせフランス語は読めない。)
我が永遠の心の師匠メヴィウスがイラストを描いている
「バラッズ」という本を見つけて
思わず買ってしまいました。
参考までに
値段は9800円(すごい高い)
水彩で描かれた何気ない絵なのですけれど
やっぱり素敵
やっぱり元気になります。

11月14日

今日アナクロはちっちゃくなって帰ってきました。
人間と違ってかわいい骨壷。
友人が送ってくれたお花の横に写真と一緒にしばらく仕事場に
いてもらおうと思ってます。

仕事場は妙に静かです。
大切な人や生き物が死んでしまったとき
欠落感というよりは
宇宙船で別の星にきたような気がします。
風景はまったく変わらないのだけれど
アナクロだけがいない星
少し寂しくて静かな星
この星でまた新たに暮らして行くんだな
という感じでしょうか。

生き物というのは基本的に女である、と思う。
遺伝子的にみても
男が持つY染色体は突然変異らしい。
男というのは女性の属性であると考えてみる。
男は作られたもの(社会によって?)
フィクション
もしくは人造人間
ブレードランナーに追いつめられたレプリカントは
世界は悲しいと泣きながら死んでいった。
世界は本当に悲しいのだろうか。
男(人造人間)はみんな悲しいという。
女性は世界を悲しみだけの場所だとは決して思わない、でしょ?
ぼくもそう思いたいし
そういう絵を描きたいと心から思う。
でも自分の描いた絵を見ると
おまえはほんとにそう思っているのか?
世界は喜びに満ちているんだっていうコンセプトのみで描いてないか?
と自問する。
まだまだ僕は人造人間
はやく人間になりたい(笑)

11月15日

アナクロがあっちに帰ってほっとしたことをひとつ
もうアナクロが外に出かけて
車にひかれてしまうんじゃないか
どっかで怪我をして動けなくなっているんじゃないか
誰かに連れていかれちゃったんじゃないか
というあらぬ想像をして心配をしなくて済むこと。
(半日帰ってこないといつもそう思っちゃう。)
家の中に閉じこめておけば
そんな心配をする必要もなかったのだろうけど
彼女に対してそういうつきあい方はできなくて
(だって自分が閉じこめられることを考えれば、そんなことできないもんね。)
自分の不安を解消するために
誰かの自由を奪うことは決してしない。
アナクロが自由に外に出かけていって
心配して待ち続ける。
心配し続ける。
ああ、相手を思いやるということは
相手を自由にする環境を作ってあげてずっと心配し続けることなんだな。
とふと思う。
アナクロが目の前で逝ってくれたことは
あたしを好きにさせてくれてありがと。
っていう感謝のあらわれなんだと思いたい。

CDロム画集「夢帽子」
の告知コーナーが出来ました。
新作イラスト4点を含むイラスト5点が載せてあります。
観てくださいね。
ここをクリック!

今日の夕食はサバの味噌煮
とってもおいしくできました。
ショウガの千切りを目一杯ばらまくのがポイント

11月16日

凄かったですね。
日本ーイラン 代表決定戦
こんなおもしろい試合は久しぶりでした。
日本のパス回しはほんとに綺麗でほれぼれしました。
中田さんはほんとにすごい。
かれまだ二十歳でしょう?
あの落ちつきはなに?

11月17日

スポーツ新聞を買おうとコンビニにいったら
全部売り切れていてがっかり
韓国と日本と仲良くいけてほんとよかった。

昨日は夜中けっこう騒いでいたので
二階のバーちゃんに悪いことしてしまいました。
床をドンッと叩かれたりして・・
うるさかったんでしょうね。
後藤が性格に似合わず、けっこう大声を出すのが悪い。

餃子をつくろうと思っていたら
挽き肉を買い忘れていて
また出かけるのもめんどくさいので
納豆に適当に野菜をぶち込んでかき混ぜて
納豆餃子をつくってみたら(粘つくので包むのがむずかしい。)
これがけっこういけるんだ。
これにイカが入ったらもっとおいしくなりそうな気がします。
ほら、飲み屋でイカ納豆とかでてくるじゃないですか。
次回挑戦

11月18日

今日はいい天気なので洗濯をしました。

空が青くて
高くて
夕焼けが真っ赤で綺麗で
月が輝いていて
何か寂しい。

11月20日

雨が降っています。
冷たい雨です。
雨で光ったアスファルトが好きです。
黒く透き通って、車のヘッドライトの反射で
なにか大きな魚が泳いでいるような光と影
環状八号線と目黒通りの交差点なんて
魚の大群の中にいる感じ

NHKの人間大学で三宅一生の特集をやっていました。
コンセプトもデザインもとってもすばらしい。
風(精霊)・身体・精神
のバランス感覚。
勉強になります。


後藤の実家から柿がいっぱいきて
馬鹿食いしたら
体を冷やしたせいかちょっと風邪気味。

11月21日

日本ーイラン戦の再放送をやるというので
楽しみにしていたら
案の定ゴールに絡むシーンばかりで
ほんとは中田君を中心とした中盤のパス回しの美しさ
を見たかったのに残念。
今思い出したけれど
加茂監督が更迭されたとき
俺の頭の中には
ふと
新監督にヤクルトの野村監督というのが頭をよぎった。
そう思ったのは俺ばかりではないはず?(笑)

11月22日

辰吉丈一郎のボクシング世界チャンピオン戦を観る
サッカーに負けず劣らず凄い試合
すさまじい肉体言語の応酬に鳥肌の立つ思いでした。
いい試合というのは
途中から勝敗なんてどうでもよくなります。
いい絵を観ると
作者なんてどうでもよくなるような
あらゆる素敵なものには
因果関係なんてどうでもよくなって
ぱっとなにかがいっぺんにどうにかなっちゃう瞬間があるのです。
(上の文章、何か長島さんの言動みたい・・でも何となく僕のいいたいことは伝わるでしょ。)

11月23日

僕も含めて
自分自身を信じるのが苦手な人が多いように思います。
心の映る鏡の前に立って
ちょっとかっこいいポーズをつけて
以外と俺ってかっこいいじゃん
と思えるナルシズムって時には大事ですね。
で、問題は
心の映る鏡というのを見つけるのが難しい。
僕にとっては絵を描くことなんだろうけれど
けっこう鏡が曇っていたりして・・
そんなときはひたすら歩きます。
歩くといろいろ気がつきます。
深刻な問題が実はたいしたことではないこと
などなど
ほら、サッカーのごんちゃんが
散歩しているとき動物を見つけると
その日の試合でゴールできるっていってたじゃないですか。
あんな感じ
歩くという行為は実はスピリチュアルな行為なんでしょうね。

11月24日

映画「ラジオの時間」を観に行く。
ちょっと切ない話で
僕はあんまり笑えなかったけれど
予告でやっていた
「モスラ2」で
モスラが変形して水中モードとかになって
魚のような鋭角な形になるところで大笑い。
蛾のくせして・・泳ぐな。

11月25日

夕方
ビルの影になって
日の射さなくなった銀杏並木に
となりのビルの窓ガラスに反射した一筋の光が
銀杏並木の一本だけを明るく照らす。
光の祭典
マグリットの絵を思い出す。
どうして人は闇の中の一点の光を美しいと思うのだろう。
なにか心の中に同じ状況があるから
その光景に共振して感動するのだと思うけれど・・
自分の心の中の一点の光ってなんだろう。

11月26日

台風のような嵐の日
キングクリムゾンを聞きながら
マイルスデイヴィスを聞きながら
なんとかデジェネット(この人いい!)を聞きながら
SIONを聞きながら
アンビエントハウスを聞きながら
音楽家の方と明け方近くまで音楽と絵と詩の話をする。
傍らには賢者のような顔をした犬がいて・・
とても濃密な時間。
ちょっと二日酔い。

11月27日

後ろから
「かとちゃん、かとちゃん。」
という声が聞こえるので、
振り向いたら2階のバーちゃんだ。
多摩川でとってきたという野生の大根を頂いた。
八百屋で売っているのとはほど遠い小さくていびつな形をしているけれど
なにやら力強い感じだ。
これが野菜の大根か、と感動する。
スライスして
味噌汁に入れていただく。
少し苦みがあって土の匂いがして・・歯ごたえがある。
葉っぱは明日大根飯にしよう。



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