『陣形』
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 「本艦と『オルカ』『ベルーガ』及び『金剛』『明神』の5隻は敵指令艦の正面に布陣する。『ステラ』『グレーホエール』『ウォーラス』『富士』『赤城』はそれぞれその後方へ移動。他の艦はその周囲に展開せよ。」
 クリストファーの口頭の命令と同時に各艦へ艦隊行動ファイルが転送される。
 「敵指令艦の主砲は中心の10隻が引きつける。周囲に展開した艦は主砲発射直前に散開、発射直後に敵指令艦を集中砲火せよ。主砲を撃った後なら指令艦まで遮る物は無い!」
 クリストファーとリュウイチの連携により、野良猫艦隊は攻撃の手を緩めることなくしなやかに陣形を変化させていく。
 「敵主砲発射まで後15分。」
 「『ステラ』『グレーホエール』『富士』配置に付きました。」
 「『ベルーガ』推進装置の不調により遅れています!」
 「合流した後に配置に付くよう『ウォーラス』に伝えろ。」
 「発射まで後10分。」
 「けんつく艦隊より通信!アルファ263・マーク172へは進入しないようにとの事です。」
 「理由を聞きたいところだが時間がない。各艦に徹底させるしかないな。」
 「けんつく艦隊内でフェイズドライブ反応!」
 オペレーターは瞬間戸惑いを見せた後、報告を続けた。
 「すみません。非常に良く似た反応ですがフェイズドライブでは無いようです。こんな反応は今まで見たことありません。」
 「教授にデーターを転送、解析させてくれ。」
 教授ことティム・クルーニー大尉。野良猫艦隊の技術科学士官である。溢れんばかりの才能の持ち主だが協調性にかける所があり、どこの隊でも上官と折り合いがつかずすぐに配置転換、回り回って野良猫艦隊に配属、早い話が飛ばされてきたのである。そんな教授にとって、好き勝手にやらせてもらえるクリストファーと野良猫艦隊は非常に居心地が良いらしく、その能力を遺憾なく発揮している。
 「発射まで後5分。」
 『ベルーガ』と『ウォーラス』の配置が多少遅れているものの、野良猫艦隊はほぼ陣形を完成させた。
 (どうやら間に合ったようだな、危険なかけだがやってみる価値はある。主砲を撃った瞬間、敵は楯を失い丸裸だ。確実に落とせる。)
 「発射まで後1分。」

 敵指令艦の砲塔の輝きが増していく。


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